「武蔵野短歌」第七巻十二号、昭和十五年十二月五日発行

 

頃日抄          東條耿一

 

癩院の外は大きく動きゐてわれらひとしく現を嘆つ

國を挙げて大聖戦の只中に眠れる如く癩院は見ゆ

養はれ足れりとするな自らも踏み出す力持たざらめやも

移り来て踏む庭土に蝉殻の一つ止まりし松毬を拾ふ

初霜の庭に見出し蝉殻をわが掌の上に拾ひとり見つ